秦郁彦『昭和史の謎を追う[上]』(文芸春秋社)p131〜132 教科書紛争で文部省を凹ませた小堀桂一郎東大教授(文学博士)はその一人で、『南京事件の総括』に序文を寄せ「校正刷で拝読し、題名に偽りなく、この難問題に就て文字通りの総決算が提出されているのを見た。そして心から敬服し、感謝し、且つ頼もしく思った。田中氏は耿介(こうかい)たる義の人にして又烈々たる情熱の人」と最大級の賛辞を呈している。校正刷を読んでのちの所感だから、お世辞ではあるまい。 すでに引用した渡部昇一上智大教授も別のひとりだが、この人は出世作の『ドイツ参謀本部』(中公新春、一九七四)で、写真ぐるみワルター・ゲルリッツのHistory of German General Staff(1953)を大幅借用したぐらいだから、盗用や改ざんには理解があるのかも知れない。 このように強力な支援者に励まされたせいか、田中は「朝日新聞はじめ洞富雄氏ら虐殺派の人びとは、ニセ写真やウソの記述までならぺたてて、ありもせぬ二十万、三一十万の“大虐殺”がさもあったかのごとく宣伝しています。これこそ歴史の改ざんでなくてなんでしょうか」と開き直っている。